取組企業へのインタビュー
社員の健康と働きがいの両立を目指し、多彩な選択肢を提供

株式会社新宣は、新潟市中央区に本社を構える、イベント・コンベンション事業を展開する企業。「のびのび いきいき ぴちぴち」を経営理念に掲げて健康経営と「いきいきと働ける職場づくり」に取り組み、令和6年度『新潟市働きやすい職場づくり推進賞』『新潟県経営者協会特別表彰』に選出されました。
「健康リスク低減」「働く意欲向上」に向けたさまざまな施策と意識変革について、取締役社長の丸山慶之(まるやまよしゆき)さん(以下、丸山社長)にお話を伺いました。
今回の受賞をどのように受け止めましたか?
丸山社長: 当社で取り組んできた健康経営や「いきいきと働ける職場づくり」の施策をご評価いただき、大変ありがたく、嬉しく感じております。イベント事業を行う企業としては、おそらく、初めての受賞ではないでしょうか。
当社の経営理念は「のびのび いきいき ぴちぴち」で、理念実現には働くみなさんの体と心、両方の健康が大切だと考えています。
力を入れた取り組みについて教えてください。
丸山社長: 全部で7つあります。1つ目に、40歳以上の社員を対象として、人間ドック受診の義務化・費用全額負担を行っています。病気の早期発見を目的として、令和4年から始めています。2つ目は保険会社が提供する健康経営のサポートプログラムです。大同生命の「KENCO SUPPORT PROGRAM」 やアクサ生命の「健康経営サポートパッケージ」 に加入しています。

健康食堂の様子
3つ目は、月1回 行っている独自の取り組み「健康食堂」です。以前提供していた「まかない」に着想を得て、社内で健康的な食事をつくり、皆で一緒に食べることにしました。

健康食堂で提供された食事
食事の際には、カロリーなどの情報発信も行っています。当社で長く働いている70代社員の協力も得て運営し、社員同士のコミュニケーションの場にもなっています。
4つ目としては、毎朝オフィスでラジオ体操を行っています。それから、5つ目は新潟市・新潟県が行う企業対抗ウォーキングイベントへの参加と、歩いてポイントを貯められる「グッピーヘルスケア」アプリの導入です。アプリで貯めたポイントを社内の自動販売機でも使うことができるようになり、より活用されるようになりました。
6つ目は、柔軟に働ける選択肢として、半日単位の有給休暇と15分単位の代休取得を可能にしたことです。社員や求職者から選ばれる存在でありたい、と考えて制度化を進めました。さらに7つ目として、社員の誕生日にプレゼントを贈っています。日頃の感謝の気持ちを伝え、必要とされていることを実感してもらうことで、心の健康につながればと思って続けています。
なお当社では、事業組織とは別に、プロジェクトチームで推進している取り組みがあります。健康経営の推進チームもその1つで、メンバーである若手3人で年間計画を検討・運営していて 、 今回紹介した施策の多くが社員の提案から始まったものです。
とくに「成果が出た」と評価しているのはどの取り組みでしょうか?

健康優良者表彰式での表彰・賞品贈呈の様子
丸山社長: 今働いている社員の「健康リスク低減」と「働く意欲向上」です。健康については、人間ドックの受診促進を行った結果、病気の早期発見や、健康意識の向上につながりました。また健康づくりへ熱心に取り組んだ人を讃える「健康優良者表彰」を行っています。ウォーキング歩数で上位3位にポイントが与えられる他、当社がお手伝いしているイベント「スポーツ公園エンジョイラン」や「リレー・フォー・ライフ・ジャパン」に参加した人もポイントがもらえます。そのように推進した結果、楽しみながら健康的な活動をする人が増えているようですね。

クリーン作戦&ヘルスウォーキングの様子
少し毛色のちがうものとしては「クリーン作戦&ヘルスウォーキング」というものを年3回行っています。「環境保護」「地域貢献」「社員の健康維持」の3テーマを掛け合わせた取り組みで、会社周辺を歩きながら清掃しています。
働く意欲向上、モチベーションアップも重要課題の1つと考えています。「生きがいを感じ、喜怒哀楽を出すことができ、自分を表現できる」「自分の時間を会社で使っても良い」と思ってもらえる。そのような職場を目指しています。
具体的な取り組みとしては、令和5年から勤怠管理システムを導入し、有給の残日数や時間外勤務、代休の取得状況を見える化しました。すると「他の人が有給を取っているし、自分も取ろうかな」とか「時間外勤務が増えてきたから、そろそろ代休を取ろう」という意識が生まれたようです。令和4年には45.5%だった有給取得率が、令和5年に68.8%、令和6年には77.4%まで上昇しました。さらに「子育て有給」という制度で新たに年5日の休暇を設定したところ、今年度、「子育て有給」 を複数名の対象者が活用しました。 昔は「長時間働いた方が偉い」といった感覚もあったのですが「それぞれの社員に合った選択肢が必要だ」と感じています。
苦労したこと、試行錯誤したことはありますか?
丸山社長: 私自身の意識変革と、社員への意識づけです。既存のやり方から変化するとき、不安を感じて「現状を維持したい」と思う人がほとんどではないでしょうか。しかし、社長や上層部ばかりが「やれ」と言って、社員が「言われたからやる」となってしまうと、あまり意味がありません。「気持ちを持っていくこと」が一番難しかったですね。

社員向けに開催された健康経営セミナーの様子
私からは年1回の決起集会で発信したり、現場での業務中に何気なく話をしたり。健康経営と「いきいきと働ける職場づくり」について繰り返し伝えるようにしました。先ほど紹介した健康経営の推進チームをつくったのも「社員の先導役として、率先するメンバーがいると、社員全体の意識が変わるのでは?」という考えからです。他には外部講師を招いた社員向けセミナーなども行ってきました。さまざまな方法で意識づけを継続することが大切だと思います。
「働きやすい職場づくり」を行う中で、会社の雰囲気は変わりましたか?
丸山社長: 人間ドックの施策では社員から「健康に不安があっても、自費受診しようと思わなかった」という声がありました。それが、会社で費用を負担するようになってからは、追加でオプション検査を受ける人も出てくるように。健康意識が高まり、自分を大切にする社員が増えてきたようです。他にも「健康診断で見つからなかった異常が人間ドックで発見されて、再検査・治療につながって良かった」とか「福利厚生が充実していてサポートが手厚いと感じる」という声が上がるようになっていますね。

新社屋の応接スペース
さらに令和6年9月に社屋を新設して、物質的な環境も整ったと思います。全体的に広くスペースをとり、中庭を設けて植物を植えたり光をとり入れたりして、屋内空間でもリフレッシュできるようにしました。
さらに「女性にも優しい会社にしよう」 と考え、女子更衣室・トイレを充実させました。更衣室には手洗い場やソファベッドがあり、「着替えだけでなく、体調のよくないときに休めるので助かっている」と聞いています。トイレは1階と2階にそれぞれ3つずつ。化粧スペースがあることも、みなさんから喜ばれているようですね。
今後の展望や、計画していることを教えてください。
丸山社長: さらに働きやすい会社をつくるために、何が必要かを学び、環境変化に対応していきたいと考えています。働きやすさと事業成長が両立するようなバランスで、いろいろなアイデアにチャレンジしていきたいですね。すでに給与体系には変更を加えていて、資格制度も導入しています。TOEICの点数や、二級建築士などの国家試験の合格によって手当を支給し、社員の意欲・積極性を引き出すねらいです。

まだ具体化はしていませんが、「社員の子どもを会社で預かれるようにできれば」という思いもあります。子育て中の社員が安心して働ける環境をつくりたいですね。他には心の健康につながるような、動物の飼育なども考えています。
どの施策を進めるにせよ、今後も、社員主体で意見を出しあって進める形が良いかなと思いますね。より良い職場づくりをみんなで進める。そのような会社でありたいと思います。
企業情報
株式会社新宣
1986 年設立。新潟市中央区に本社を構えるイベント・コンベンション事業を展開する企業。各種イベント・コンベンション会場の企画、デザイン、設計、施工、管理とトータル的にサポートする業務を行う。上越、東京、台湾、ベトナムにも拠点を構え、多岐にわたり事業を展開している。 従業員数は40名(令和7年4月現在) 。