取組企業へのインタビュー

健康管理・休暇取得・コミュニケーション促進を軸に目指す「みんなが幸せを感じられる会社」

株式会社新潟藤田組は、1925 年創業、新潟市中央区に本社を構える、建設・不動産・環境事業を展開する企業。「みんなが幸せを感じられる会社」を目指して、社員の健康管理、休暇取得、コミュニケーション促進などに取り組み、令和6年度『新潟市働きやすい職場づくり推進賞 市長賞』に選出されました。

幅広い取り組み内容や今後の展望などについて、代表取締役社長の藤田直也(ふじたなおや)さん他6名のみなさんにお話を伺いました。

[お話を伺ったみなさん]

写真左から営業部課長代理の関川翔太(せきかわしょうた)さん、土木事業部課長代理の中谷友美(なかやともみ)さん、管理本部課長代理の早福俊幸(そうふくとしゆき)さん、管理本部の吉田真子(よしだまこ)さん、営業部部長の桑原伸高(くわはらのぶたか)さん、管理本部課長代理の藤田ゆり(ふじたゆり)さん、代表取締役社長の藤田直也さん。

今回の受賞をどのように受け止めましたか?

代表取締役社長の藤田直也さん(以下、藤田社長): 令和5年度の表彰式に出席し、受賞企業の事例を聞いて大いに触発されたんです。当社では「みんなが幸せを感じられる会社」を掲げて、全社集会、社内BGM、ウォーキングチャレンジ、男の料理教室など独自の取り組みを行ってきました。

そうした当社ならではの取り組みを社内外にPRできればと考え、応募した次第です。しかし、市長賞までいただけるとは思いもせず……驚いた、というのが正直なところです。

 

本社オフィスの様子

藤田社長: 受賞は社員の励みになったと思いますし、今年は当社にとって創業100周年という節目。良い記念になりました。

社外の方からもお祝いの言葉や「働きやすい会社としてお墨付きをもらいましたね」という言葉もいただいて。ありがたく感じているところです。

 

力を入れた取り組みについて教えてください。

藤田社長: 1つ目は人間ドックの取り組みです。きっかけは令和5年、忘年会で社員が倒れ、救急搬送されたことでした。後日確認してみると、倒れた社員は人間ドックを予約していながら受診を出来ていなかったとわかったのです。「もっと社員の健康管理について、会社としての本気度を示さなければ」と思い、人間ドック費用を全額会社で負担することにしました。また確実に受診してもらうためのフォローも行っています。

藤田社長: もう1つは男性の育児休業取得率の向上です。両親が現役で働いている若い世代では、家族のサポートが得られず、夫婦2人で子育てをしなければなりません。支援方法を考えていたときに、新潟市が男性の育休取得支援に乗り出したことを知り「これだ」と。それから支援制度利用に向けた就業規則の見直しや、環境の整備、全社集会での周知など、申請のハードルを下げていきました。すると、男性4名が育児休業を取得してくれたんです。

 

「会社に入るときだけでなく、安心して働き続けることのできる職場環境」が重要だと思っています。そのような考えで取り組むと、現在働いている方、これから入社する方、両方にとって「働きやすい職場づくり」につながるのではないでしょうか。

 

桑原さん: 情報発信も重視しており、何か社内で新しい取り組みがあれば、ホームページやブログの担当者に情報を届ける仕組みを設けています。就職希望者やお客様に「新潟藤田組はこういうことをしている」と知っていただくため、会社全体で取り組んでいるところです。

 

とくに「成果が出た」と評価しているのはどの取り組みでしょうか?

早福さん: 3つあります。1つ目は時間単位の有給休暇の導入による有給休暇取得率の向上です。導入前の令和3年が36.6%、令和4年が44.6%、令和5年が49%、そして令和6年には55.3%まで上がりました。通院など「時間単位で休みたい」という要望にもマッチしたようで、子どものいる・いないに関わらず、多くの社員に利用されています。

 

藤田ゆりさん: 2つ目は男性社員の育児休業の取得率向上です。始めた頃は「実際に活用するのは難しい」という雰囲気がありました。そこで制度周知に加えて、育休を取得した社員の体験談、新潟市・新潟県からの育休取得支援補助金制度などを紹介し、取得しやすい雰囲気づくりを実施。結果、令和6年度には男性4名が30日以上の育児休業を取得しました。令和4年度には1名・7日間のみの取得、令和5年度は取得者がいなかったことを踏まえると、大きな前進です。「育児休業を取得して良かった」という声があがり、休業取得後に時短勤務も行う男性社員も出てきました。

 

関川さん: 3つ目はウォーキングによる健康づくりの取り組みです。新潟市が主催するウォーキングチャレンジに、第2回開催から、会社として連続6回参加しています。初回の参加者は11名でしたが、直近では全社員の約半数が自発的に参加するようになりました。楽しみながら歩数を競い合うことで、運動習慣の定着や心身の健康づくりにつながっていると思います。

 

全社集会でのウォーキングチャレンジ結果発表の様子

イベント期間中は「何歩歩いた?」という会話が生まれますし、「他の人が歩いているなら自分も」と急激に歩数を増やす人もいて。みなさんが楽しく取り組む姿を見ると、取りまとめをしている私も嬉しくなりますね。

 

苦労したこと、試行錯誤したことはありますか?

桑原さん: 時間単位有給休暇の取得、育児休業の取得は制度を策定するだけではうまくいきませんでした。「制度を利用することが自然」という雰囲気を作る。その大切さと難しさを実感しましたね。そこで全社集会などで、新たな取り組み・制度の紹介を繰り返し行い、社員の抵抗感を減らして理解してもらえるように努めました。

 

藤田ゆりさん: 育児休業の取得については、周囲への遠慮と給与面の不安がハードルになっていたようです。そこで担当者として、育児休業制度、協会けんぽ、「親和会」という互助会による支援、新潟市の補助金制度などの周知に取り組んでいきました。取得希望者だけでなく、その上司ともお話をして、会社全体で理解が深まっていく中で、取得が進むようになったと感じています。

 

早福さん: 私も育児休業を取った中の1人です。当初は「周囲に理解してもらうのは難しいかな」と思っていたのですが、会社から上司にも説明があり、とても助かりました。

 

「働きやすい職場づくり」を行う中で、会社の雰囲気は変わりましたか?

男の料理教室の様子

早福さん: ウォーキングチャレンジや男の料理教室に参加している人からは「楽しい」という声をよく聞き、会社の雰囲気が良くなっているのを感じます。また新卒の採用活動で取り組みを紹介しているのですが、学生さんからも好評ですね。

 

桑原さん: 個人的には、令和6年に初めて人間ドックを受診しました。以前は「健康診断を受けていて体調の悪い実感もないし、受けなくていいかな」と人間ドックは受けていなかったんです。でも「全額負担してもらえるなら、受けてみようかな」と受診を決めました。制度を設けてもらって、感謝しています。全社的にも受診する人が増えていますね。

 

吉田さん: 3回開かれる全社集会では、各部署の取り組み発表と、部署・役職・年齢を問わずフラットにお話できる懇親会が行われます。普段関わりの少ない部署の方ともお話する機会が増えて、仕事中にも話しかけたり相談したりしやすくなりました。

 

藤田ゆりさん: 時間単位の有給休暇や育児休業の取得が増えたことで、助け合い精神が育まれ、より円滑なコミュニケーションが生まれるようになりました。働きやすい職場の好循環に繋がったのではないかと思います。

 

今後の展望や、計画していることを教えてください。

藤田社長: 令和74月から社員の奨学金の代理返還を始めました。社内アンケートで、想定よりも多くの人が奨学金の返済を抱えているとわかったためです。ただし、奨学金の返済がない社員もいる中、社員同士で不公平感が生まれないようにしなければ、という思いもありました。考えていたときに、令和6年度働きやすい職場づくり推進企業の表彰式で、新潟市に奨学金返済支援制度があることを知って。制度を利用して不公平感を緩和しながら代理返済を進めることが可能になりました。

 

中谷さん: コミュニケーション面でも、新しい取り組みを行いました。以前から月2回、資格試験の勉強会を開いていたのですが、令和7年の5月と6月にはランチ会も行いました。参加者からは「情報共有や、不安・悩みを共有でき、良い時間になった」という感想をもらっていて。9月に行われる「建築施工管理技士」1級・2級の本試験の激励のために行ったので、開いて良かったな、と思いました。

 

藤田社長: 変化のスピードが速く、ある時点で「良い」と評価したことが、次の時点では変わってしまうような時代になりました。そのような中でも安心して働ける職場をつくるため、会社として柔軟に対応する必要性を感じています。また柔軟な対応を可能にするためにも事業としての成長が必要です。社員の成長とともに会社も成長する。企業理念、ビジョンを全員で共有できる。そのような会社を目指して職場運営を続けていきたいと思います。

 

企業情報

株式会社新潟藤田組

1925 年創業。建設事業(土木事業、建築事業、住宅事業)、不動産事業(賃貸仲介、管理、売買仲介、損保・生保代理など)、環境事業(太陽光発電、土質改良、土壌汚染対策)を行う。従業員数は93名(令和71月現在)。