働き方改革・ウェルビーイング経営コラム・レポート
AIで変わる働き方
大進化の生成AI。地域企業での活用可能性とは?

「生成AI元年」とも呼ばれる2023年以来、ビジネスシーンで生成AIという言葉を耳にする機会が爆発的に増えました。文章や画像など、さまざまなコンテンツをAIが自動生成する技術は、世界的に大きな注目を集めています。こうした最先端のテクノロジーは、都市部の大企業だけでなく、実は地域の中小企業にとっても大きなチャンスを秘めています。
本コラムでは、生成AIの可能性や活動事例、導入のポイントなどを全3回に渡ってご紹介します。第1回は、生成AIがなぜ注目されているのか、地域企業にとってどのような活用可能性があるのかをお伝えします。
執筆者プロフィール
山田 崇
株式会社ドコモgacco
Chief Learning Officer/地域越境ビジネス実践プログラム責任者
大学卒業後、長野県 塩尻市役所入庁。地方創生や官民連携事業に従事。地域課題の解決と企業の人材育成を組み合わせた越境プログラム「MICHIKARA(ミチカラ) 地方創生協働リーダーシッププログラム」を立ち上げる。地方創生の取り組みをまとめた書籍『日本一おかしな公務員』を日本経済新聞社から上梓。2022年、24年間勤務した塩尻市役所を退職し、NTTドコモに転職。現在はドコモgaccoで「地域越境ビジネス実践プログラム」の責任者を務める。また、信州大学 キャリア教育・サポートセンター 特任教授(教育・産学官地域連携 分野)として「地域活性化システム論」、地域企業との共同研究による「アントレプレナー実践ゼミ」、全学横断特別教育プログラム「ローカルイノベーター養成コース」を担当。2016年から内閣府 地域活性化伝道師。

生成AIが注目される背景
生成AIとは、簡潔に説明すると、従来のAIがもっぱら「既存の情報を分析して判断する」役割を担っていたのに対し、「新しい情報を生み出す」機能に特化したAI技術の総称といえます。
たとえば、人間が与えたキーワードをもとに文章を書いたり、画像を作成したり、さらには動画を生成したりできる高度な技術として、短期間で一気に注目が高まりました。 背景にはディープラーニング(深層学習)の進化と、大量のデータ活用が急速に進んだことが挙げられます。SNSやクラウドを通じて蓄積された膨大なデータから、AIは言語や画像のパターンを学び、新たなコンテンツを生み出すまでに至っています。
国内でも生成AIチャットや自動翻訳サービスの利用が急増しており、ビジネスにとって必須のツールになりつつあります。

自分だけのエージェント
生成AIは「自分だけのエージェント」を持つ時代を切り開きつつあります。たとえば、個別のアカウントや端末で動かすAIエージェントが、自分の好みや業務内容を学習し、日々の仕事や生活のパートナーになってくれるのです。具体的には以下のような活用シーンが考えられます。
- パーソナルアシスタントとしての活用
スケジュール管理やメールの下書き作成をAIがサポート。日々の細々としたタスクを支援してくれることで、担当者はよりクリエイティブな業務に集中できます。 - 意思決定のサポート役
社内での企画会議や戦略立案の際に、AIエージェントが過去のプロジェクトデータや市場動向を瞬時に解析・提案。短時間で複数のアイデアを検討できるため、経営者やリーダーが迅速かつ的確に判断する後押しになります。 - 学習・トレーニングパートナー
学習意欲が高い社員には、AIエージェントが個人のスキルや苦手分野を把握して、最適なトレーニングメニューを提案するなど、人材育成にも役立ちます。
私自身も、仕事の効率化やアイデア創発のために生成AIを駆使しています。
例えば、初めての人と会うときや商談の前の情報リサーチ。これまではWEBサイトで検索していましたが、生成AIを活用すると、様々なサイトを検索した情報のまとめを1ページでまとめてくれたりします。しかも、どのページを参照したかのエビデンスをつけてくれるので、間違った情報ではないかの確認も容易です。このツールは、人や企業を調べるだけでなく、知らない言葉を調べたり、書籍を読む前に情報を集めるのにも最適です。
また、動画をまとめてくれる生成AIツールでは、それぞれの場所でどんなことが話されているかの要約をしてくれて、さらに動画のタイムコードも教えてくれます。全部の動画を見る時間がないときでも、内容を把握して、必要な箇所だけ動画を見ることができます。
さらに、移動中には、音声会話で生成AIツールと会話しています。企画を考えるときの壁打ちや、自分の考えを整理するのに役立っています。
従業員の働き方とウェルビーイングへの効果
こうした「自分だけのエージェント」は、従業員の働き方そのものを変革し、ウェルビーイング(心身の健康と充実感)の向上にも寄与すると期待されています。
- 業務負荷の軽減
繰り返し作業や単調なタスクをAIがサポートすることで、従業員は負担感やストレスを軽減できます。長時間の細かい事務処理から解放されることで、過度な残業や疲弊を避けられ、より健康的なワークスタイルが実現しやすくなります。 - 仕事へのやりがい向上
AIが補助的な業務をカバーすることで、従業員はより専門性や創造性が求められる業務に集中できるようになります。自分のアイデアやノウハウを活かせる仕事が増えると、モチベーションが高まり、仕事に対する満足度も向上します。 - 柔軟な働き方の実現
AIエージェントと連携してリモートワークやフレックス制度を導入する企業も増えています。場所や時間の制限が少なくなるため、家庭やプライベートとのバランスを取りながら働ける環境づくりにつながります。
このように、生成AIを賢く活用することで、企業だけでなく従業員個人がより健康的かつ生産的に働ける仕組みを整えられるのです。
地域企業が直面する課題と生成AIの可能性
そんな生成AIは地域企業にどんな効果をもたらすのでしょうか。地域の中小企業が抱える課題としては、人手不足や高齢化、売上拡大のための新たな販路開拓などが挙げられます。これまで対面や口コミが中心だったビジネスモデルが、コロナ禍を機にオンライン化の必要性に迫られるなど、大きく変化を求められる場面も増えてきました。
こうしたなか、生成AIは「新たな強みを創出するツール」として注目されています。たとえば、地域独自の魅力を発信する際に、AIがキャッチコピーやSNS投稿文を自動生成してくれれば、マーケティング担当者の時間と労力が大幅に削減されます。また、伝統工芸品や特産品など、地域に根差した素材を使った新しい製品開発のアイデアをAIが提案してくれる可能性もあるでしょう。
さらに、AIチャットボットを導入することで24時間体制の問い合わせ対応が可能になったり、地域企業同士が連携してビッグデータを活用し、新たなビジネスチャンスを得られるケースも考えられます。生成AIは単なるコスト削減だけではなく、むしろ地域企業の生き残りや新たな展開に寄与する存在になり得るのです。
導入へのハードルと留意点
ただし、実際に生成AIを導入する際には、いくつか注意すべき点があります。
- コスト・運用負荷
無料のツールから有料のクラウドサービスまで多種多様ですが、ビジネス規模によっては初期導入や運用コストがかかることもあります。 - 人材育成・リテラシー
社員が十分にAIを活用できるだけの知識やスキルを習得するには、研修などの初期投資が必要になるでしょう。 - 情報セキュリティ・倫理面
AIが生成したコンテンツの著作権やプライバシー、情報漏洩のリスクへの対策は欠かせません。
これらの課題をクリアするためには、専門家との連携や段階的な導入が欠かせません。まずは小さなプロジェクトで試験的に取り組み、その成果を見極めながら徐々に社内での活用範囲を広げていくと失敗リスクを低減できます。

地域企業が生成AIを積極的に活用することで、人手不足解消や新たな販路開拓の糸口が見えてくる可能性があります。特に、地域ならではのコンテンツやストーリーを発信する場面での活用には大きな期待が寄せられています。
また、生成AIを上手に取り入れることで、従業員一人ひとりが働きやすく、より健康的かつ生産的な労働環境を実現できるでしょう。今後、この連載では地域の企業での生成AIの活用事例についてお届けしていきます。ぜひご期待ください。