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インターンシッププログラム作成支援|地元企業の魅力を伝えたいという想い【タンレイ工業株式会社 関川 和則さん】

「新潟市中小企業人材確保・育成支援事業」は、市内企業の人材確保や若者等の市内就労を促進するため、企業の魅力度向上や社内外への発信力強化のほか、効果的なインターンシッププログラムの構築を通して、企業の採用力向上を支援する事業です。

事業の一環であるインターンシッププログラム作成支援では、インターンシップの基礎を学び、その後、個別コンサルティングを通して、各社に合ったプログラムを作成していきます。

本コラムでは、支援を受けた理由や取り組みの内容、その後の変化、今後の展望についてご紹介します。今回は、タンレイ工業株式会社 関川和則さんにお話を伺いました。

コロナ禍後に実感した選ばれる難しさ

御社の事業内容について教えてください。

タンレイ工業株式会社は、リング製品を製造する会社です。産業用ロボットのベアリングをはじめ、建築用補強リング、ドクターヘリ、飛行機のエンジン部分、新幹線や海外の高速鉄道のモーター部品、など、幅広い分野で使われる製品を手がけています。

リングができあがるまでには、鍛造、熱処理、旋削加工など、いくつもの工程がありますが、同社ではそれらを自社で一貫して担っていることが大きな強みです。

地元企業でありながら、高い技術力を活かして幅広い産業を支えています。

当支援を受ける前はどのような採用活動をされていましたか?

大学生向けには就職サイトへの掲載や合同企業説明会への参加、高校生向けには就職冊子への掲載など、一般的な採用活動は続けてきました。ただ、それだけでは十分ではなくなってきていました。特に高校生採用は厳しさが増しており、進学率の上昇に加え、コロナ禍の反動もあってか、求人を出す企業自体が増えてきました。それにより、選ばれる難しさが一段と高まっていると感じていました。

コロナ禍の後、採用の難しさが急に増したことを実感していました。コロナ禍前も決して簡単ではありませんでしたが、ある程度は応募がありました。ところが、コロナ禍を経て状況が変わり、同じ採用活動を続けていても、思うように人が集まらなくなってきました。

もともと必要な人数を十分に採れていたわけではありませんが、以前は高卒採用で毎年2〜3人ほど採用できていたものが、1人になり、年によっては0人という状況も出てきました。製造業を志望する若者そのものが減ってきている感覚もありますし、働き方の選択肢が広がる中で、製造業が以前より選ばれにくくなっているのではないかとも感じています。

加えて、大手企業も同じように求人を出しているので、どうしても知名度のある企業が先に選ばれやすい。技術力や実績には自信があるのですが、まず会社を知られていなければ選択肢に入らないという壁を実感していました。

最初の一歩を踏み出すきっかけ

インターンシップに力を入れようと考えたきっかけ

社内でも、採用が難しくなっているという認識は共有しており、「このままではいけない」「何か手を打たないといけない」という話は会議の場でも出ていました。ただ、採用にどこまでお金をかけるべきか、その費用対効果がどの程度見込めるのかは見えにくく、思い切った施策には踏み出しづらい部分もありました。

私自身も、どういうことをやっていけば採用につながるのか、模索していました。何か新しい取り組みが必要だとは思っていても、具体的に何をやればいいのかははっきりしておらず、今回は、そうした中で一つのきっかけになればと思って参加しました。すぐに結果が出るとは思っていませんでしたが、こうした取り組みを続けていくことが、いつか採用につながる流れになっていくのではないかと考えました。

大学生向けインターンシップについては、「オープンカンパニー体験会」への参加なども行い、他部署からの協力など、社内的な土台はある程度できていました。一方で、高校生向けにはまだ十分な取り組みができていませんでした。高校生採用がより厳しくなっていたため、今回は高校生向けのインターンシッププログラムを企画することにしました。

「作って終わらない」ことで学生へ届ける

どのようなプログラムを作りましたか?

プログラムを考える上で、自社の魅力を一方的に押し出しすぎないことを意識しました。もちろん、会社の強みを伝えることは大切です。ただ、前面に出しすぎると、どうしても企業側の一方通行な発信になってしまいます。そうではなく、まずは「地元にこういう会社があって、こういうものを作っているんだ」と知ってもらえる内容にしたいと考えました。

タンレイ工業という会社名自体、まだあまり知られていません。だからこそ、実は地元にこうした技術を持つ会社があること、そして身近にありながら、産業用ロボットや新幹線など幅広い分野を支えていることを、知ってもらいたいと思いました。まず「知られていない」ことが大きな課題だと感じていたからです。

今回の高校生向けプログラムでは、テーマを2つ用意しました。ひとつは、ものづくりへの関心が強い生徒向けの体験型。もうひとつは、SDGsや環境配慮の視点も交えた探究型です。これは、より幅広い層に興味を持ってもらうための工夫でもあり、少人数で参加する場合、クラス単位で参加する場合など、柔軟に対応できるようにするためでもありました。

ものづくりに興味のある生徒であれば、製造現場の体験型プログラムに魅力を感じてもらえると思います。一方で、授業の一環としてクラス単位で実施する場合は、それだけでは学校側に提案しづらい面があります。そこで、当社の取り組みをSDGsの視点から捉え直し、環境配慮や地域企業の役割を考える探究型のテーマも設けました。

たとえば、当社では太陽光パネルを活用して一部の電力をまかなっていますし、自社一貫生産を行っていることで、工程ごとに別会社へ運搬する際の輸送や排ガスを抑えることにもつながっています。そうした点を高校生に伝えた上で、工場見学の後に、「ほかにどんな環境にやさしい工夫ができますか?」と、考えてもらう内容にするなどのやり方も考えられるので、製造業に直接関心がある生徒だけでなく、より広い層にも入り口をつくれるのではないかと考えました。

インターンシッププログラム広報用のチラシ

ほかにどのようなことを考えて作りましたか?

今回は、作って終わりにしないことを意識しました。1月にプログラムを構成し、案内用のツールを整えたあと、すぐに高校へアポイントを取り、10校ほどの高校を訪問しました。学校の先生方は忙しく、時間を取ってもらうだけでも簡単ではありませんでしたが、実際に足を運んで説明したことで、少しずつ反応が見え始めました。

その中で、とある高校からインターンシップ受け入れの打診をいただくことができました。多くの地域企業の中から学校側がインターンシップ受入先を選ぶ中で、ここまで来られたのは、大きな前進だと感じています。プログラムを作ったこと自体ももちろん大きいのですが、それを持って学校へ出向き、きちんと説明したからこそ得られた反応だったと思います。

当支援を受けて気付けたことは?

もし、自分一人で作った場合には偏った内容になると思うんです。だからこそ、色々なアドバイスをいただくことで、自分たちでは当たり前すぎて気づかなくなっている自社の魅力を再発見することができました。働きやすさや風通しの良さ、人間性など、言葉で伝わりづらい部分について気づかせてもらいました。例えば、以前は社員一人ひとりの誕生日にケーキを用意してお祝いをしていました。2026年からはケーキではなく休暇の取得に変更になりましたが、そういった自社では当たり前だと思っていたことが、客観的に見ると魅力であると気づくことができたことも、収穫でした。

また、今回の取り組みを通して、改めて感じたのは、採用は人事担当だけの仕事ではないということです。採用活動がある程度回っていた頃は、求人サイトに掲載し、合同説明会に参加するという形でも何とか成り立っていました。しかし、応募が減り、採用環境が厳しくなってきた今は、それだけではもう難しい。だからこそ、会社全体で採用を意識していく必要があると思っています。

インターンシップには、現場の協力が欠かせません。仕事の手を止めて対応してもらう以上、負担があるのは事実です。ただ、後輩が入ってこなければ、将来的に困るのは現場でもあります。そう考えると、今のうちから採用や育成に関わることは、決して人事だけのためではなく、会社全体のための取り組みだと思うようになりました。

学生の地元への定着を目標に

今後の展望は?

地元の高校生に、地元にも魅力的な企業がたくさんあることを知ってもらえるきっかけになることが目標です。私自身、新潟が地元で、新潟がとても好きです。大都市や他の地域で就職する方も多い中で、学生に地元に定着してもらうことで、地元を盛り上げたいという気持ちを持っています。

そのために、例えば企業研究のような形で授業の一環として、毎月色々な高校の生徒さんたちが来てくれるような、そんな流れをいつかは作りたいと考えています。

当支援を他の企業にもおすすめしたいですか?

自社の魅力を発見するということと、魅力を発信するためにも支援を受けることをおすすめしたいと思います。一社でも多くの企業が支援を受けて発信することができれば、地元に魅力ある企業があることを知ってもらうことにつながるので、どんどん受けて欲しいです。

企業情報

タンレイ工業株式会社

タンレイ工業株式会社は、新潟市北区に本社を置く金属製品メーカーで、ベアリングや建設機械・ロボット向けなどの各種リング部品を、鍛造から熱処理・旋削・研削・組立まで一貫生産しています。