取組企業へのインタビュー

定期的な対話タイムや「褒めレポート」で上司部下間の相互理解を促進。
社員の幸せと成長に繋がる職場に。

新潟市中央区で情報通信事業を展開する株式会社ウイング。

「社員と家族の幸せを創る」をビジョンに掲げ、これまでに数多くの人事・組織系の施策を実施。新潟市の社員幸福度向上応援事業のモデル企業として、管理職と若手メンバーのコミュニケーション向上や相互理解に繋げる取り組みもしています。

長年社員の幸福度向上に積極的に向き合ってきたなか、新たに取り組みを始めた背景にはどんな思いがあったのか。同社会長の樋山証一(ひやま・しょういち)さんにお話を伺いました。

社員と家族の幸せに向き合って30年

今回の取り組み以前から、貴社では「社員と家族の幸せを創る」というビジョンを掲げてきたと伺いました。

はい。ビジョン自体は、今から20年以上前に管理職の皆さんと、夜遅くまで議論して決めました。

社員だけでなく、家族の幸せも。

樋山さん:実はこの会社を創業する前にも一度起業していて、上手くいかなかった経験があるんです。私自身、家族に支えられて苦しい時期を経てきたからこそ、数あるIT企業の中からうちを選んでくれた社員たちや、そのご家族に対して「本当にありがたいな」という強い思いがあって。

通常会社のビジョンというと、お客様や社会への貢献に焦点を当てることが多いと思いますが、私たちにとっては、働く社員とその家族が幸せを感じられる基盤づくりをすることがまず大切だという判断に至りました。

もちろん、お客様をないがしろにするわけではありません。お客様から信頼していただける企業をつくっていくことは、結果的に社員や家族の幸せにも繋がると考えています。

そのビジョンに沿って、これまでにも社員の幸福度向上や働き方にまつわるオリジナルの取り組みをされてきたとか。

樋山さん:そうですね。たとえば、年に一度の社員間褒賞制度「ウイングアワード」は25年間続いています。管理職が選出する優秀賞だけでなく、「普段は寡黙だけど実はすごく面白い人賞」など、各社員が好きに褒章名を付けて投票できる「アワードB」をつくったことで、一人ひとりの個性や頑張りを認める文化が根付いてきました。

ほかにも、社員一人ひとりの誕生日に、本人とそのご家族に宛てたお手紙を私が直筆で書いたり、会社の情報を瓦版やブログで発信したりしていました。すると、社員のご家族から「自分のパートナーの会社や仕事についてわかってよかった」と言ってもらえたり、お子さんからお返事の手紙をもらったりすることもあって、私自身パワーになっていましたね。

若手社員の本音がわからなかった

そうした独自の取り組みをすでにやっていたなかで、今回改めて新潟市の応援事業にチャレンジしたのはなぜですか?

写真:樋山証一さん

樋山さん:マネージャー層の間で、20代前半の若手社員たちの考えてることがよくわからないという声が上がってきていたんです。

若者の価値観が多様化している今、自分のやりたいことと仕事が結びついているのか、幸せを感じながら働けているのか、本音の部分がわからないと。そういった声を踏まえて、今回はマネージャー層と若手社員のコミュニケーション課題に取り組むことにしました。

なるほど。具体的にはどのような改善の取り組みをしたのでしょうか?

樋山さん:若手の本音を引き出すワークショップを行い、それをもとにいくつかアクションを考えました。その一つが、上司と部下の「1on1ミーティング」です。毎週15分間、一対一で仕事以外のことを話す時間をつくることによって、お互いを知って理解しようというもの。

それも踏まえた上で月に1回、上司が部下に対してA4の紙1枚で褒めるという仕組みを始めました。部下のできないところではなく、良い部分やこうしたらさらに伸びるということに目を向けて書いてもらっていました。

すごい。さまざまな方向で上司部下間のコミュニケーションの機会をつくったのですね。

樋山さん:はい。私もある部下を担当して書いていました。ほかには、20代の若手社員が「こんなことやりたい」というものを同好会として企画するという取り組みもありました。結果的にボードゲーム、麻雀、ドライブ、ゲームの4つの同好会ができています。そこにかかるお金は会社が経費として出しています。

それぞれ積極的にメンバーを募って、先輩も巻き込んでやっていましたね。マネージャー層からは若手は主体性がないなんて声も上がっていたけれど、実は見えていないだけということもある。私も麻雀同好会に誘ってもらって参加しましたが、久しぶりで楽しかったです。

何気ない会話が、お互いの理解や信頼関係をつくる

では、具体的なアクションを進めていくなかで苦労した点があれば教えて下さい。

樋山さん:ただでさえ業務が忙しい中で、毎週15分の1on1ミーティングや、月1回のレポートのような時間をつくれないという意見もありました。でも、結果的には一人ひとりのことがわかるようになったという声が大きかったですね。私が社長を終えて引き継ぐタイミングで一度止めるはずでしたが、結局今でも全体の7~8割が1on1ミーティングを毎週続けているようです。

社員の皆さんにとっても、欠かせない貴重な時間になっていたのかもしれませんね。樋山さんから見て、社内の変化や手応えは感じますか?

写真:樋山証一さん

樋山さん:そうですね。たとえば「報連相しなさい」と言っても、信頼関係がなかったり、話しかけづらかったりする上司にはなかなかできないですよね。こうした何気ない話をする時間を定期的に持つことで、話しやすい雰囲気が醸成されて改善してきたのかなと思います。

あとは、改めて褒めるのって意外と難しいんですよね。最初の頃は上手くできない管理職メンバーもいました。でも、この取り組みを通して「今までパートナーを褒めるという視点を、あまり持っていなかったことに気付いた」と言っていた社員がいて。

樋山さん:日頃から部下の良いところを見つけて褒める習慣がつくことで、一番身近な家族にもきちんと伝えられるようになるんですよね。そうやって“褒める目を持つ”ことは、結果的に社員とその家族の幸せをつくることにも繋がるんだなと感じました。

しっかりビジョンに繋がっていますね。

樋山さん:ここで挙げた以外にも、最近は現場の社員たちがどんどん主体的に企画して取り組んでくれていることがあるみたいなので嬉しいです。自分で考えて実行するという経験が、やっぱり大切だと思うんですよ。たとえうまくいかなくても、それが財産になりますから。

月曜日から仕事に行きたくなる会社に

自主的に取り組みが生まれているのは素晴らしいですね。今後、樋山さんの中で何か新しく考えていることはありますか?

樋山さん:新たに何か始めるというよりは、今までの取り組みの精度をあげていきたいですね。私は昨年9月に社長を退任して次の世代に譲ったので、彼らと創り上げてきたウィングの中で、できることをやろうと思います。

私個人としては、日曜日の夜に社員たちが「仕事に行きたくて仕方がない」と思えるような会社づくりをしていきたいんですよね。

そう思えたら、社員の方たちにとっても幸せですよね。

樋山さん:そうですね。働く時間がただ辛いものではなく、他の人を喜ばせたり、自分を成長させたりするパフォーマンスの場だと思えることが大事だと考えています。

もちろん働きやすい環境をつくることも大切なので、弊社では、全社員が働く時間と空間を自分で判断できるようにしています。お客様や他のメンバーに迷惑をかけないのが前提ですが、たとえば朝6時半から15時半頃まで働くとか、少し体調が悪いから3時間休憩して、そのあと残りをやるでもOK。

自由だからこそ、社員同士のコミュニケーションを大事にしつつ、個々の主体性を高めてもらいたいですし、私もより良い会社にするために社員たちと議論を重ねていきたいと思っています。

企業情報

株式会社ウイング

平成3年創業。新潟市中央区の本社以外に、燕三条、東京都、大阪府にもオフィスを構えるIT企業。企業や自治体向けのコンピュータシステムの導入提案から開発、運用支援、ソフトウェアの開発などを行っている。新潟本社では、現在34名の社員が在籍中。

https://www.weing.co.jp/