取組企業へのインタビュー

社員の健康を考える経営から、建設業界全体のイメージと未来を変えていく

新潟市西蒲区に本社を構える建設会社 新潟ボンド工業株式会社。『新潟市健康経営』の認定も取得し、社員が健康でイキイキと働ける職場づくりに取り組み、令和5年度『新潟市働きやすい職場づくり推進賞 市長賞』に選出されました。

具体的な取り組み内容や、業界に対する想い、展望などについて、中心となって取り組まれている専務取締役 小林 猛(こばやし たける)さん、営業部 部長 鶴巻 正志(つるまき まさし)さん、管理部管理課 係長 丹保 由紀子(たんぽ ゆきこ)さんにお話を伺いました。

写真左から鶴巻さん、小林さん、丹保さん

日常的な部分から取り組む、社員の健康な体づくりと働きやすさ

働きやすい職場づくりのために、取り組んでいることを教えてください。

小林さん: 令和になってから、全国的に風潮が強まってきて、うちの会社も健康経営の取り組みを進め、『新潟市健康経営』の認定を取得しています。その中で、社員に健康な体づくりのきっかけになればと思い、社内にフィットネスジムを完備しています。以前から設備としてはあったのですが、採用の際にもPRになるのではないかと考えて綺麗にリニューアルしました。

夕方になると、若い社員たちとベテランの社員たちが一緒にトレーニングしていて、年齢に関係なく仲良く筋トレしています。終わったらお互いにトレーニングの仕方を教え合ったりしていますよ。

写真:小林さん

鶴巻さん: 建設業界は特に健康面を大切にするという意識が大切ですよね。とても人気がある業界とは言い難いので、リクルートの場に行った時に名だたる強豪企業さんと競うために、そういった武器を整えてきました。その結果が今に繋がっているのではないかと思っています。この業界では人手不足や過重労働が問題になりやすいので、働き方改革を進め、昔からある業界のイメージを変えていくことが大切だと思っています。休日出勤を減らしたり、休日自体も5日増やしました。休める時には有給を使ってもらったり、残業もなるべくしないように会社として取り組んでいます。

小林さん:元々休日が少なく、それをカバーするために有給を自由に使えば良いという風潮でした。昔は年間で休日が88日でした。土曜日もほぼ出勤。今は休日をせっせと増やしていて110日まで増えました。今も120日を目標にして、会社に掛け合っています。

丹保さん:休める環境を作ることですよね。以前は「休んで良いのか?」という雰囲気で、友人の結婚式でもない限り有給を取ることもしなかったので、今は本当に休みやすい雰囲気になっていて、自由に有給を利用しています。毎月有給取得数の集計をして、少ない方には直接お声がけもしています。そのため、有給取得率は80%を超えています。

それと、育児休暇についての推進もしていて、女性も男性も取りやすいように雰囲気づくりをしています。また、女性管理職の拡充といった取り組みも進めていて、最近では女性社員も増えてきています。

 

鶴巻さん: 時短勤務においては、お子さんの小さい女性社員が短時間勤務の制度を利用していました。男性も要望があれば、環境を整えていくことを検討していますが、まだ現場での短時間勤務は難しい部分もありますので、そこは試行錯誤しています。

丹保さん:ただ、時短勤務は個人に任せてしまうと誰かに負担がいってしまう可能性があるので、社員の仕事内容を皆で把握できる体制にして、お互いフォローし合えるようにもしています。

健康診断だけでは分からないことがあると痛感

働きやすい職場づくりに取り組みはじめたきっかけを教えてください。

小林さん: 以前、1年に2人の社員が重い病気にかかってしまい、健康診断だけでは分からないことがあると痛感しました。それで、健康診断を担当している会社さんに相談をしたところ、「それでしたら人間ドックなどいかがですか?」とご提案いただき、「それならやってみよう」と実施に向けて動き出しました。

写真:丹保さん

丹保さん:それに合わせて「婦人科検診もどうですか?」とのお話もいただき、社員の皆さんにはイキイキと生活してもらいたいという思いから、現在では会社で費用を100%補助する体制になりました。3〜4年継続していることもあり、2次健診を受けに行ってくれる人も増えています。それと、人間ドックを受けることをきっかけにして運動を始める人も増えていますね。

社内での合意形成と生産性アップへの試み

働きやすい職場づくりに取り組む上でどのような部分に気をつけましたか?

小林さん:フィットネスジムや人間ドックも、会社の経費を投入しているので、上司に理解してもらうために社内でプレゼンを行い、最終的には「やりたいならいいよ」という感じで承認してもらいました。

丹保さん:休日が増えることなどで収入が減らないように、ベースアップも行いましたね。

鶴巻さん:ただ、いざ実施するとなったら原資が必要なので、その点は営業面で努力しました。それに加えて、社員の協力がないと原価も下がらないので、無駄に人数をかけて仕事をしないなど、いかに効率を上げて生産性を上げていくかなどにも取り組んでいますね。

ホームページの更新とInstagram での発信力強化

働きやすい職場づくりに取り組み、社外からの反応はいかがでしょう?

鶴巻さん:このような取り組みをしていることで、リクルート面で話はしやすいです。例えばフィットネスジムにタニタの体組成計を設置してあるので、利用した際に体のスキャンもできるんです…などという話をすることもあります。それに、Instagramもよく投稿しているので、そこでジムの写真などを見てもらい、社員の健康のことを考えている会社なんだなと認識してもらえればと思っています。Instagramには現場の雰囲気から社員の誕生日に買ってきたスイーツの写真まで投稿しており、フォロワーが1,500人を超えています。

写真:鶴巻さん

小林さん: ホームページは10年くらい更新していなかったのですが、ここ1年で刷新し、更新を進めました。それまでは採用に関する情報も少なくて、採用専用のページを作りたいと思っていましたので。それに加えて途中更新ができるシステムも導入しました。それに、スマホで見ると、さらに見やすくなっています。今の若い子たちは、スマホで見て、一瞬でページを見るかどうか判断しますからね。

自分たちだけではなく、業界も持続可能な働き方へ

働きやすい職場づくりについて、今後の展望を教えてください。

小林さん: 取材など様々な場で発言したり、業界での人たちの集まりで共有したりもしています。自分たちの取り組みについてもですが、相手も同じ悩みを抱えていたりするので、お互い情報交換したりしています。今後は、健康的な働き方や業界全体の改善を目指して発信を続けていきたいです。うちの会社だけが良くなっても意味がないので、業界全体を良くしていけるように発信していきたいですね。

施工管理の会社へ入社する方は増えているということなのですが、まだまだ私たちのように現場で働く会社で働くことは敬遠されがちです。この先、働いている人たちがどんどん引退していく中で、後任のために良い環境を作っていかないと業界自体が維持できなくなると思います。

鶴巻さん:今は体の健康に気を配ることが主流ですが、これからはメンタルヘルスにももっと注力していかなければならないと考えています。弊社も社員が50人を超えそうなので、『労働安全衛生法』に基づいて、ストレスチェックの導入やハラスメントの講習、アンガーマネジメントセミナーなども、徐々に進めていかなければなりません。ただ、まだまだ浸透していない部分もありますね。

丹保さん: それに、女性も働きやすいように環境を整えることも必要になります。社内では男女でトイレを分けたり、シャワー室を作ったりしています。また、規模の大きい現場であればトイレが男性女性で完全に分かれていたりと改善されてきてはいます。ただ、更衣室の整備などはまだ整っていない部分もありますので、徐々に改善していっています。

小林さん: 建設業界はこれまで、長時間労働や体力勝負というイメージが強かったかもしれませんが、それを変えるために、健康的で持続可能な働き方を提案していきたいですね。そして、やっぱり仕事は面白くないと続けられません。どれだけ大変でも達成感ややりがいがないと続きませんからね。若い世代にそれを伝えていくのも私たちの役割だと思っています。

企業情報

新潟ボンド工業株式会社

1982年設立。新潟市西蒲区に本社を構える建設会社。設立以来、コンクリート構造物の補修・補強工事を手がける。従業員数は48名。うち6名が女性。(※令和6年10月時点)